トークイベント

Think Together! My Life, My Story 2013.10.23WED 森の宮ピロティホール supported by リリー・オンコロジー・オン・キャンバス 河村隆一

第2回 Think Together! My Life, My Story

supported by リリー・オンコロジー・オン・キャンバス
2013年10月23日 大阪森の宮ピロティホール

2012年に続き第2回となる「Think Together! My Life, My Story supported by リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」が2013年10月23日、大阪市内で開催されました。出演者は、LUNA SEAのボーカルであり、ソロアーティストとしても活躍中の河村隆一さん、大阪医科大学第二内科学教授の樋口和秀先生、がん経験者でエッセイスト、そしてリリー・オンコロジー・オン・キャンバスの審査員でもある岸本葉子さんの3名です。司会進行は、FM802のDJ内田絢子さんによって行われました。当日は小雨が降る中、700名を超える方が参加し、出演者と共に「がん」について学び、今を生きることの大切さを考える機会となりました。

 

第一部では、「がん」に関する日本の現状を樋口先生に解説いただき、がん検診や大切な人が「がん」になった時、私たちはどうすればよいのか、について考えました。

日本における死亡原因の第1位は「がん」

樋口
現在、日本における死亡原因の第1位は、「悪性新生物」いわゆる「がん」です。脳卒中などの脳血管疾患や肺炎をおさえて、1980年を過ぎた頃から1位となり、その数は毎年増加の一途をたどっています(図1)。臓器別にがんの罹患率をみると、男性では、1975年頃は胃がんが飛び抜けて多かったのですが、ピロリ菌の感染率低下に伴い、最近では減少してきました。その一方で、大腸がんが増加しています。女性も胃がんについては男性同様、減少していますが、乳がん、大腸がんが増加していますから、このようながんについては、しっかり検診を受けていただきたいですね。
日本における死亡率の推移  
 
特に女性の場合、大腸がんで亡くなる方が多いです。その理由として、見つかるのが遅いということが挙げられます。女性は、検診で引っかかった後の二次検査を受けない方が多く、大腸がんが見つかったときには、かなり進行しているために亡くなる方が多いというのが現状です。

「がんになると亡くなる」と考える方もいらっしゃると思いますが、最近では、早く見つけることができれば根治できる「がん」がたくさんあります。ですから、もし、がんと診断されても、悲観的になる必要はありません。ご自身のがんにはどのような特徴があるのか、主治医からしっかり説明を聞いて、そのがんに立ち向かっていってほしいですね。

「がん」と診断されて、「まさか、私が…」という思いも、他の患者さん達との交流などによって次第に立ち直りへ

内田
岸本さんは、がんを経験されたと伺いましたが、その時のお話を聞かせていただけますか。
岸本
がんと診断されて最初に思ったことは、「まさか、私ががんになるなんて…」でした。家族も「がん家系」ではありませんでしたし、食事も割と規則正しく、性格もいわゆる「がん性格」ではないと思っていましたから。2人に1人はがんと診断される時代なので、私ががんになってもおかしくないのですが、その時は、「まさか、私が…」という思いが強かったですね。それから、思い浮かべたのが映画やドラマの主人公のように「私、死ぬの?」ということでした。しかし、がんと診断されてから12年経ち、こうして皆さんの前でお話しできているわけですから、私の考えは間違っていたことになりますね。
内田
その時、気持ちを切り替えていくきっかけになったことは何でしょうか。
岸本
がんと診断されると、意外に決めなければならないことが多いんです。受診する病院、治療法、入院中の仕事の段取り、家族への報告など多くのことを、とにかく短い時間で決めなければならず、次第にがんであることに慣れ、主治医から病気のことを聞くうちに、がんになったからといって、明日死ぬわけではないことが分かってきました。また、他のがん患者さんとお話しするようになると、不安を抱き、弱気になるのは何も私だけではないことが分かってきました。こうした交流を重ねるうちに、打たれ弱いと思っていた自分が、いつの間にか立ち直っていたように思います。
内田
河村さんの周りで、がんと闘っていらっしゃる方がいる、もしくはその方をサポートした経験などございますか。
河村
母方の祖父が肺炎で入院した際にがんが発見されまして、家族と共に治療をサポートした経験があります。入院した時は、肺炎をはじめ全身がかなり衰弱した状態でしたし、高齢ということもありましたので、主治医も手術は選択されませんでした。結局、体力や免疫力を上げていく方法を主治医と一緒に家族で選択して治療を行いました。

がんの死亡率を下げるためのポイントは、「生活習慣の改善」「検診を受けること」「治療の進歩」

内田
では、がんの死亡率を下げるために、重要なことは何でしょうか。
樋口
大きく3つあると思います。1つ目は、「生活習慣の改善」です。私がいつも患者さんにお話しするのは、好き嫌いなくバランスの良い食事を摂ることと、健康な生活をすることです。例えば女性なら、十分な睡眠をとる、快便、ストレスをためない、といったことが免疫機能を高めることになります。適度な運動もいいですね。男性には、暴飲暴食を慎み、タバコは禁煙するように指導しています。

2つ目は、「検診を受けること」。都道府県別にがん検診の受診率をみると、大阪は、男女とも受診率が低いことが分かっています。健康でなければ大阪商人が大好きな「商売繁盛」につながりませんから、がん検診はしっかり受けてほしいですね。

3つ目に、「治療の進歩」があります。がんの治療は、薬も技術も日進月歩で進んでいます。私の専門である消化器領域でも、これまでお腹を切らなければならなかった手術が、内視鏡で取ることができるようになりました。こうした医療の進歩によって、がんの死亡率が下がってきているのです。
内田
岸本さん、河村さんが日頃、健康を保つために心がけていることをお聞かせいただけますか。
岸本
私は一度がんを経験しましたので、バランスの良い食事と適度な運動は、特に心がけています。運動については、なかなか時間の確保が難しいので、週1回1時間は運動するように、仕事と同じ優先順位で手帳に記入しています。
河村
僕は仕事がら地方へ行くことが多く、食事はコンサートが終わってから夜遅い時間に摂ることになりますから、どうしてもバランスの良い食事を摂るのは難しいのが現状です。このような生活の中で、考えたのが「早起き」です。とにかく毎朝6時半に起きることを決めています。はじめは夜遅くまで飲んでいると6時半に起きるのが辛かったのですが、それでも自分の中で4時とか5時まで起きていても6時半には起きようと決めると、次第に早く家に帰るようになり、身体がリセットされてきたように感じています。

また、直接目で見えない「声帯」を駆使して歌を歌っていますから、喉が痛いと感じた時には、すでに声帯がかなりダメージを受けていることが多いんです。ですから、喉はもちろんですが、他の臓器についても何かいつもと違うな、と思ったらすぐに病院へ行くようにしています。

がんを早く見つけるためにがん検診の受診を

樋口
朝、早起きするために夜更かしをしないことは、たいへん良い心がけだと思います。それから、身体の調子が少しでも気になる時には病院へ行く、とおっしゃいましたが、体調に異変がない時に検査を受けるのが「がん検診」なのです。
がん検診の受診率を2007年と2010年で比較すると、乳がんや子宮がんは若干増えているものの、胃がん、大腸がん、肺がんはあまり増えていません(図2、3)。がんは早く見つけることができれば、治すことができますから、検診を受けて早めに治療することを心がけてください。
岸本
私は、毎年、樋口先生が挙げられた5つのがん検診を全て受けています。仕事が忙しいから、別に今悪いところは無いし、と言い訳をしていると、早期発見のタイミングを逃してしまうので、必ず手帳に書いて仕事の予定と同じ優先順位にしています。検診でがんが見つかると怖いという方もいらっしゃいますが、がんがあるのに見つからないでいることの方が、よほど怖いと思うのです。私の場合、特に見つかりにくいがんを治していただいたのに、見つけやすいがんで命を落としたら悔しいじゃありませんか。ですから、いくら忙しくてもがん検診は必ず受けています。

ただ、女性にとって大腸がんの検診は、便の検査や内視鏡の検査などハードルが高いですよね。でも、検便を知り合いが見るわけでもないし、内視鏡検査も想像しているほど恥ずかしいわけでもなく、検査はベッドに横になっているうちに終わりますから、そんなに恐れるほど恥ずかしくないことをぜひお伝えしたいです。
死亡率の減少が確認された検診 がん検診受診率
河村
実は、僕はこれまでがん検診を受けたことがないんです。血液検査だけは年に4回ほど受けていたんですが、詳しい検査は受けていませんでした。つい先日、深夜の12時頃に友人たちと飲みながら、こんなにしょっちゅう飲んでいるんだから、そろそろがん検診を受けないとまずいんじゃないか、と誰かが言い出して「じゃあ、みんなで検診を受けに行こう」ということになりました。ちょうど、年末に向けて全身の人間ドックを予約したところです。

がんの治療は、みんなでサポートし合う時代

内田
まさに、はじめの一歩を踏み出すきっかけができたということですね。続いて樋口先生に伺いたいのですが、例えば自分の身近な人ががんと診断されたとき、私たちはどのようにサポートしていけばよいのでしょうか。
樋口
最近のがん治療は、精神面でのサポートをする精神科の先生をはじめ、痛みをサポートする緩和医療の先生など、がん治療の専門家がチームになってがん治療に取り組んでいます。主治医の先生には遠慮することなく、何でも聞いてほしいですが、もし先生に聞きづらいときには、看護師さんやサポートしてくれる周りのスタッフに相談してください。今やがんの治療は、決して患者さん、家族だけで行うのではなく、みんなでサポートし合う時代を迎えているのです。

それから、がんに関する正しい知識を持つことも重要です。一例ですが、患者さん向けにがんのことを分かりやすくまとめた「もっと知ってほしい」シリーズという冊子が発行されています。そのラインナップは、大切な人ががんになったとき、どのように対応すればよいかをはじめ、肺がん、乳がん、卵巣がんなど、がんの種類別に分かりやすく解説しています。インターネットでは、患者向け冊子など、がんに関する情報を入手することができますから、こうした情報を上手く活用してほしいと思います。
内田
続いて、「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」がどのようなコンテストなのか、岸本さん、ご紹介いただけますか。

自分の想いを絵画や写真で表現

岸本
「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」は、がんの患者さんやその家族、患者さんをサポートしている方に絵画や写真を応募していただくコンテストです。

「がん」を経験すると、様々な想いがこころの中にわいてくるのですが、時にその想いを抱え込んでしまうことがあります。この想いを絵画や写真を通じて目に見える形で表現し、みんなで想いを分かち合う場を提供する、というのが本コンテストの目的でもあります。

絵画一つをとっても、どのように色を付けて、どのような構図にするか、想いの表し方は一人ひとり違います。それは、これまで歩いてこられた人生と同じです。がんを経験されても、表現することを通じて自分らしく生きられる社会を実現する一助となることを目指して始まったコンテストなのです。

立ち直りのきっかけや勇気を与えるとともに「がん」に対する理解を拡げる

岸本
本コンテストには、3つの意義があります。
1つめは、応募者への意義です。応募者がこころの中に抱えている想いを絵画や写真といった色や形に置き換えることで、こころが少しずつ整理されていき、立ち直りのきっかけになります。

2つ目は、作品を見る方への意義です。作品をご覧になる方の中には、ご自身もがんを経験した方や、家族や友人ががんの闘病中という方がいらっしゃいます。作品を通じて「自分も同じように感じている」と共感し、自分も何か表現してみよう、と勇気を持つきっかけになれば、と考えています。

3つ目は、社会全体に与える意義です。あまりがんに関係のない方が、作品をご覧になる場合もあります。このような方には、たとえがんを経験したとしても絵画や写真を通じてご自身の想いを表現することができるんだ、ということを理解してほしいと思います。このような活動により、社会全体に「がん」に対する理解を拡げたいと考えています。
内田
樋口先生、河村さんは実際に作品をご覧になってどのような感想を持たれましたか。
樋口
とにかく勇気がわいてきました。患者さん、あるいは患者さんご家族が「一緒にがんと闘っていこう」と一丸になっている想いが伝わり、我々も勇気づけられます。医療従事者も一緒に「闘いに行く」「やっつけよう」と一体感が生まれたようで、非常にうれしいですね。
河村
写真や絵画作品の中には、一つひとつの光や希望があふれ出ています。目で見た瞬間を切り取って、自らのこころの痛みや希望というものがそこに重ねられていくと、全ての物に意味が生まれてくる。こうした皆さんの想いが作品から伝わってくるところが、とても素晴らしいと思いました。
内田
では、岸本さんと河村さん、第1部のトークミーティングで感じたことをまとめていただけますか。
岸本
本日は比較的若い女性の方に多くご参加いただいたことが、とてもうれしいです。女性の場合、乳がんは40歳代が一番多く、子宮がんも若い人が多いです。がんは高齢者の病気だと思わず、自分のこととして、若いうちから検診を受けてほしいですね。
河村
僕もつい最近まで、がんになったら治らないんじゃないかと思うと怖くて、こころのどこかであまり考えないようにしていたのかもしれません。でも、このイベントをきっかけに、がんへの理解が深まりました。これからは、自分をはじめ、友人や家族、みんなの健康のことを真剣に考えていきたいと思います。
内田
本日は皆様、貴重なお話をどうもありがとうございました。

第2部では、LUNA SEAのボーカルであり、ソロアーティストとしても活躍中の河村隆一さん、ギター・福田真一朗さん、ピアノ・葉山拓亮さんの3人によるアコースティックコンサートが開催されました。「I love you」「Love is…」とヒット曲が続き、9月に発売されたニューアルバム「Life」から、「Sea of Love」「七色」、ドラマ「神様もう少しだけ」の主題歌でもある「I for you」の全5曲が熱唱されました。

ニューアルバム「Life」では、河村さんの友人や家族の死、東日本大震災などの大きな震災を通して、今生きている時間、いかに魂を燃やして生きるかがテーマとなっています。
そして、このアルバムには今を生きる若い人たちへ向けたメッセージもたくさん含まれています。河村さんが青年期に経験したバブルの時代を振り返りながら、若い人たちがもっと夢に向かって生きていけるよう、自分たち大人が若者を支えていく時代を取り戻したいという、このアルバムに込めた想いをお話しいただきました。

また、アコースティックコンサートの最後に、河村さんから会場の皆さんへ向けたメッセージをいただきました。

Messeage

「この会場には、音楽で結ばれている方や、がんを克服するためにがんばっている方など、様々な立場の方がいらっしゃいますが、共通しているのは、何か一つの想いを共有しているということです。こうして同じ会場に集まって、皆さんの想いを共有することで、新たな気づきが生まれ、更に進化していくのではないでしょうか。本日は皆さんと一緒に、このような貴重な時間を過ごせたことは、とても嬉しく思います。」